レッドロケッツ応援記 ~天皇杯・皇后杯全日本バレーボール選手権リポート~

  info_category1.gif2017/12/25



 2017年最後の公式戦。これまでレギュラーラウンドでは苦しい戦いが続くからこそ、この天皇杯をきっかけに飛躍し、新たな年を迎えたい。準決勝を前に、選手たちは意気込んでいた。
 準決勝の相手はトヨタ車体クインシーズ。今シーズン、ここまで二度の対戦では惜しくも勝利することができなかっただけに、年の最後は勝って締めくくりたい。そして、昨年のリーグに続いて日本一の称号を手にしたい。
 まず山田監督が試合のポイントとしたのが、第1セットの立ち上がりだった。
「競り合いになると、相手の核となる選手に押し切られる。これからを見据えても、ここでゲームを取り切る、試合に勝つ、セットに勝つ、勝負所で勝って行く強さが必要だと思うので、まずはアタック得点を武器に苦しいところでしっかり得点できる状況をつくりたい。そのために、しっかり練習を重ねてきました」
 ポイントゲッターとして山田監督が期待を寄せたのは古賀だ。自身も「今週は得点を取ることが自分の役割だと思って取り組んできた」と言うように、サイドアウト時だけでなくラリー中も積極的にトスを呼ぶが、トヨタ車体もサーブ、ブロックからのディフェンスで着実にボールをつなげ、リードを奪いたい状況で相手に先行されてしまう。古賀も「スタートから自分たちが攻めなければならなかったのに、逆にこちらがやるべきことをやられてしまった」と振り返ったように、序盤に先行したトヨタ車体はサーブ、スパイクで得点を重ね、そのまま第1セットは19-25で押し切られてしまった。
 すぐに気持ちを切り替え、第2セット目から立て直す。そんな決意を胸に、表情を引き締めコートに向かう選手たちを、スタンドを赤く染めた大応援団が後押しする。まずチームに活力を与えたのがキャプテンの柳田だ。高さで上回るトヨタ車体のブロックに対してもひるまず、機動力を生かした攻撃で得点を重ねる。闘志あふれる柳田の活躍で勢いづいたレッドロケッツは大野のブロックや柳田のサービスエース、古賀のスパイクで得点を重ね、最後は柳田のスパイクで25-22、第2セットはレッドロケッツが取り返した。



 相手に先行されても追いつける力がある反面、一気に抜け出しきれないのが今季のレッドロケッツにとっては大きな課題でもある。皇后杯準決勝の第3セットは、まさにそんな脆さが露呈した。
 サーブで崩し、決定力の高い外国人選手の攻撃で得点を重ねたトヨタ車体に0-5と先行され、山田監督はセッターの塚田に代えて山口を投入する。コートの外から冷静に試合を観察していた山口が心がけたのは、組み立てよりもまず、コート内を落ち着かせることだったと言う。
「アタッカーを勝負所で決めさせるために、まずはアタッカーが打ちやすい質のトスを上げよう、しっかり助走に入って思い切り踏み込めるリズム感を戻そう、と意識しました」
 単に山口の強みを生かすだけでなく、通常ならば相手が「こう来るだろう」と予想する裏をかく巧みなトスワークでスパイカー陣を生かす。山口に続いて投入された荒谷の機動力を生かした攻撃も通り、サイドが決まり始めたことでようやくレッドロケッツに本来のリズムが生まれる。山内のサービスエースや古賀のスパイク、ブロックで得点を返すが、序盤の失点をひっくり返すことはできず、18-25で第3セットはトヨタ車体。再び塚田、柳田をコートに戻して臨んだ第4セットも序盤からトヨタ車体に先行される展開となり、中盤にも連続失点。センターから上野の攻撃で得点を返すも及ばず、15-25でこのセットを失い、セットカウント1-3で敗れたレッドロケッツは2017年最後の公式戦、天皇杯・皇后杯全日本バレーボール選手権大会を3位で終えた。



 準々決勝の岡山戦も2セットを落とした状況からフルセット勝ちを収め、トヨタ車体戦もこれまでの対戦時よりも目に見えて得られた収穫や成果もあり、悔しい敗戦ではあるが、決して肩を落とすばかりの結果ではない。
 新たな年の始まりとともに再開するリーグ戦に向け、わずかな時間ではあるが、その限られた中でもできることはきっといくつもある。山田監督は言った。
「サーブで崩して、自チームのチャンスにつながる場面をつくっているのに、その後のパスが悪かったり、守備のミスが目立ちなかなか流れに乗ることができませんでした。まずは守りを安定させて、何本も何本も粘って全員で1点を取りに行く。そんなバレーを展開できるように、もう一度気を引き締めて頑張ります」
 これが自分たちのこだわり、目指し続けて来たバレーボールだ。そんなスタイル、姿を多くの人に見せられるように――。柳田が言った。
「1本で決められる外国人選手がいるチームではない私たちが勝つためには、まず1本目の質を上げること。攻めるべきところは攻めて、守るところはしっかり守る。手堅いチームになりたいです」
 来るべき新年へ向けて。皇后杯の経験、悔しさも糧にしてレッドロケッツはもっともっと強くなる。





 飄々と、冷静に。いかなる時、どんな役割でも自分ができることをやり尽す。常に万全の準備をしてコートに立つ。その風格は今春高校を卒業したばかりのルーキーであることを忘れさせるほど、堂々としている。
 だが、そんな荒谷でも、初めての日本一決定戦、皇后杯の準決勝は「すごく緊張した」と苦笑いを浮かべる。
「周りの先輩から『自分のことをやれば大丈夫だよ』と言われて肩の力が抜けました。リーグではなかなか自分のやるべきことがやりきれなくて、すごくモヤモヤしていたので、とにかく思い切りやろう。そう思ってコートに入りました」
 V・プレミアリーグの開幕戦からスタメンとしてコートに立ったが、勝ち負け以上に「何もできなかった」という後悔ばかりが残った。その後もミドル、サイドと何でもできる器用さを重宝され、何度もコートに立ち続けたが、試合を終わるたび、「もっとできたのに」と悔やむことばかりだった。
 2017年最後の公式戦となる皇后杯、トーナメント戦は勢いに乗ったチームがそのまま頂点へと駆け上がることも十分にある大会だ。だからこそチームはもちろん、自分自身もこれからにつなげる自信を得られるような大会にしたい。第3セットの劣勢時からの投入ではあったが、レフトから多彩なコースへ打ち分けるスパイクは強い印象を残し、試合後にはこれまでとは違う、少し安堵した笑顔も見せた。
「何もできなかった、よりも、全力でやったけれど失敗した、と思えるほうがずっといい。これからはリザーブでなくスタートとして出場するんだ、という強い気持ちを持って戦いたいし、何もしないで終わるのは嫌。しっかり、爪痕を残したいです」
 新しい年はきっと、躍進の年になるはずだ。
 

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