レッドロケッツ応援記 ~平成30年度 天皇杯・皇后杯 全日本バレーボール選手権大会リポート~

  2018/12/25

 平成最後の天皇杯。決勝へ進めば3年ぶり。優勝すれば初の栄冠となるタイトルを制し、年明けからのVリーグに弾みをつけたい。大会を迎える準備は万全だった。2回戦から順調に勝ち進み、デンソーとの準々決勝に勝利。決勝進出をかけ、レッドロケッツは昨年のVリーグ覇者、久光製薬との決戦に臨んだ。



 会場を埋め尽くすほどのレッドロケッツサポーターがスタンドを真っ赤に染める中、その声援に後押しされたレッドロケッツは序盤から波に乗る。セッターの山口がミドルの上野、島村をうまく使い、9-6と先行。主将の柳田が「久光製薬の隙を付け入るなら序盤が大事だと思って試合に入った」と言うように、上々のスタートを切り、中盤にも古賀のスパイクや荒谷の機動力を生かした攻撃で16-13とリードして終盤を迎える。
 しかし数多くの大会を制し、勝ち方を知る久光製薬の強さは追い込まれてから発揮される。島村が「ここで1本、という場面でミスが出てしまった自分たちに対して、相手は確実に大事なポイントをものにした。その僅かなものかも知れないが大きな差につながった」と言うように、競った場面でサーブ、スパイクで得点を重ねる久光製薬に逆転を許す形となり、第1セットを失ってしまった。



 1セットを失ったからといって、それで終わるわけではない。ここから何としても逆転する、という強い意志をプレーで見せる。それをまず形にしたのが荒谷だ。「攻めるべきところで攻め、なおかつミスをしないように気をつけながらも、自分が少しでもいいサーブを打って相手の打数を減らそうと集中して打った」というサーブが連続サービスエースとなりチームを勢いづける。25-23と僅差の勝負を制したレッドロケッツが第2セットを奪取し、セットカウントを1対1とした。


 
勝利へ向けて一気に走ろうとするレッドロケッツに対し、久光製薬も堅守で応戦。互いに拾い、つないで託す。ラリーの応酬が続く中、着実に得点を重ねた久光製薬が25-21で第3セットを制し、レッドロケッツが逆転勝利を収めるためにはあと2セットを取り返さなければならない。
 追い込まれた苦しい状況で、チームを鼓舞したのが柳田だ。
シーズン前には「マイナスを取り除いてプラスを引き寄せる」という石言葉のパールと赤の石でチーム全員のお守りをつくり、全員がシューズの紐やケース、髪の毛につけ心を1つに戦おう、とチームを束ねるよう働きかけた。もちろんそれはコートの中でも同じ。リーグ随一の高さを誇る久光製薬のブロック、そして名手揃いのレシーブにも屈せず、技に頼るだけでなく力で打ち切るパワフルなスパイクで果敢に攻め、まだ諦めない。溢れんばかりの思いを、プレーで見せつけた。



 そんな主将の姿を、金子監督も高く評価した。
「あの身長で、2枚ブロックにつかれてもひるまず打つ。技で逃げるのではなくパワーでぶつかっていく姿はチームにとっても大きな力になりますし、彼女のプレーや姿がインパクトを与えることが、日本バレー界にとっても大きな財産になると感じています」
 当然ながら相手も、これ以上乗せてたまるか、と柳田へのマークを厚くする。終盤、渾身のスパイクがブロックに阻まれ、第4セットも21-25で久光が連取。最後まで諦めずに何度もボールに食らいつくレッドロケッツのプレーに会場は何度も沸いたが、惜しくもあと一歩が及ばず、決勝進出を果たすことはできなかった。



 残念ながら平成最後の天皇杯・皇后杯を制することはできなかったが、そのリベンジを果たす機会はまだまだある。平成最後、そして新方式でのVリーグ初代女王となるためにこの悔しさも力に変える。
 柳田が言った。
「大事なボールを託された時に、自分の思いを込めて思い切り打つことはもちろん大事ですが、そこでいかに余裕を持って、もっとプレーに幅を持たせることができるか。先輩に頼るばかりでなく、プレーも、声がけも、存在も自分がチームの軸になれるように、年明けからの新しいスタートにつなげたいです」
 すべてを糧に、新たな年を迎えよう。そして最後は皆で笑おう。今は、そのために越えなければならない大事な時だ。きっと、もっと強くなる。平成30年の終わり、そして31年の始まりに。レッドロケッツは、さらなる飛躍を誓う。







■Hot Topic 古賀紗理那

 平成最後の天皇杯で優勝したい。
 準決勝前日、古賀は胸を張り堂々とそう宣言した。
 2018年を迎えてから、昨季リーグでは目指した日本一には届かず悔しさが残った。それを糧に次は世界で、と飛躍を誓うもネーションズリーグでは思うような活躍ができず、8月のアジア大会はメンバーからも外れた。何が足りないのか、自分の武器は何か。逃げずに向き合った結果、今秋の世界選手権ではまさに「エース」と呼ぶにふさわしい姿を見せた。
 だからこそ、古賀は言う。何としてもレッドロケッツで勝ちたい、と。
「今までは周りの目が気になったこともあったし、注目されるのが嫌だったこともありました。でも今はそれも力にしたいと思っているし、どんな相手にも『絶対負けない』と思っているし、ほんとに負けたくないです」
 初優勝を狙った皇后杯でも「エース」として堂々たる姿を見せた。サーブで狙われても平常心を保ち、崩されてもそれで折れるのではなく今度はスパイクで取り返す。相手のチャンスを1枚ブロックで仕留めるなど、「自分が引っ張る」という意志をプレーで見せた。
 今季初タイトルとなる皇后杯を制し、さらなる飛躍を果たしたい。そう誓って臨んだが、久光製薬に1-3で惜敗を喫し、頂点にはあと一歩、及ばなかった。
もちろん敗れた悔しさはある。だが、得られたものはそれだけではない。
「試合を追うごとにチームとしても自分としても成長している手応えはあるので、セッターやサーブレシーブの関係をもっと徹底させて、チームとして勝てるようにしたいです」
 勝負はまだまだこれから。そしてエースの成長ももっともっと、これからが本当の戦い。ギアチェンジをして、新たな年も負けずに戦い続けるだけ。平成最後のリーグを制するのは、私たちなのだから。
 

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