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2020/03/27

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レッドロケッツを支える人たち②小川未央トレーナー 「トレーナーは“調整役”。何より求められるのはコミュニケーションと人間力」

 監督と選手をつなぐコーチと同様に、より深く現場に携わる、チームに欠かせないポジション。それがトレーナーだ。
 選手が常にベストパフォーマンスを発揮するように日々のコンディション管理はもちろん、ケガをした選手のリハビリやメンタル面のフォローなど、幅広い分野で選手、チームを支えるトレーナー。陰の立役者を取り上げる連載第2回は、選手たちからも「チームのお母さん的存在」と慕われる小川未央トレーナーに話を聞いた。


 
名前 小川 未央(おがわみお)
役職 トレーナー
在籍 2012~NECレッドロケッツ(現職)
資格 あん摩・マッサージ・指圧師、鍼師・灸師、全米公認ストレングス&コンディショニングスペシャリスト
(NSCA-CSCS)、日本トレーニング指導者協会認定トレーニング指導者


――バレーボールに限らず、多くのスポーツ現場で活躍する「トレーナー」。日頃、どんなお仕事、役割を果たしているのでしょうか?

まず基本となるのは選手のコンディションを整えること。ケガなどの障害予防や、治療、ケガをした選手のリハビリは当たり前としてベースにあり、それらにプラスして、常に選手、スタッフをつなぐためにコミュニケーションを取ることが大事な役割だと思っています。

――選手の身体に触り、密接な立場で信頼関係を築くために小川トレーナーが心がけているのはどんなことですか?

一番は距離感でしょうか。私がチームにトレーナーとして携わるきっかけを下さった岩﨑(由純、現メディカルアドバイザー)さんは、とてもポジティブでカリスマ性もある方です。とても学ぶことは多いですが、どうやっても私は同じようにできません。私は選手と年齢も近く、同性なのでまた違うアプローチの仕方がある。特別技術を持っているとか、特別にテーピングを巻くのが上手、というわけではないと思っているので、何が一番自分の強みか、と考えた時に、選手にとって話しやすく、コミュニケーションを取りやすい存在になろう、と。勘は鋭いほうだと思うので、日頃から選手をよく見て「普段とちょっと違うな」という要素を繊細に感じようと思ってきました。でもその過程では失敗したな、と思うことも多々あります。いろいろな経験を重ねての今だと思います。


怪我の予防・治療の他にもスタッフとのコミュニケーションの架け橋の役割も担う

――どんな時に「失敗した」と思うのでしょうか?

いっぱいあります(笑)。基本的に、普段から平常心を保つようにしています。ケガをした選手の中にはショックで泣く選手や腹を立てる選手…様々いますがそこに対しても過剰に接するのではなく、できる限り普通でいよう、と心がけています。ただ、ケガをした直後の1~2日は感情の起伏が激しいので、そこは出来る限り近くで寄り添って、少し気持ちが落ち着いてきたらしっかりケガに向き合わせ、復帰に向けて頑張ろう、と話をしていきます。選手によって気持ちの変化も様々なので接し方にはいつも悩みます。実際に距離感や言葉選びを間違えて選手とぶつかることもありました。選手はスタッフのことをよく見ていますからね。学ぶことが多いです(笑)。

――距離感を保つうえで、同性ということでメリット、デメリット、さまざまな難しさもあると思います。

そうですね。実際に同性だからよくわかる分、近い距離でいろいろな話しができるというメリットもありますが、同じことを言うにしても、男性スタッフから言われてスッと入ることもあると思います。選手の心情がわかりすぎてしまうこともあるので、「今は話しかけない方がいいな」と気遣いすぎてしまうこともありますが、そういう時は男性スタッフと連携を取ってチームが上手くいくように考えたりしています。選手から「未央さん、お母さんみたい」と言われることも多いですが、それはありがたいような複雑な気持ちですね(笑)何年経ってもこの仕事をする以上、いかに距離感を測るか、というのは一生ついてくる課題だと思います。


スタッフ間では常に選手のコンディションについてコミュニケーションをとっている

――選手とのコミュニケーションについて。たとえば治療中など、選手にとっては「監督やコーチに言えない」という話もできるのがトレーナーさんでもあります。時にはナイーブな話もあるかと思いますが、どのように対応しているのでしょうか?

選手に限らず、誰しも人に悩みを打ち明ける時に否定されるのは嫌だと思うので気持ちに寄り添うことは意識しています。でも、そのまま肯定するばかりでもなく、「でもそれはもしかしたら、こんな風に言いたかったんじゃないのかな」とか、少し言い回しを変えながら、選手にも解決策を考えるように促します。

――具体的にはどんなやり取りをしますか?

たとえばリーグ中であれば、誰もが試合に出たいと思う中、出られない選手もいます。その状況で、何も考えずに「出られないから悔しい」と選手起用に不満を持つ選手がいたら、「どうして今出られないのか、一回整理して考えてみようよ」とそれぞれの強みを確認させて、練習から前向きに打ち込ませるようにする。考えて、実践してもダメで「やっぱり納得できない」という場合は、「そこまで考え抜いたなら、直接監督に聞いてごらん」と選手に行動するよう投げかけます。選手、スタッフ、それぞれの立場や状況で考えることはさまざまですが、私は出来る限り選手に近い立場でいて、そのうえで、スタッフの意図も組みながら「こう思っているんじゃないかな」と伝えるようにしています。


施術の時間は他愛ない話でも選手とのコミュニケーションを大事にしている

――選手の意見を監督やコーチに伝えることはありますか?

ケガに関することで言えば、その時々の状態は逐一伝えます。練習制限をしなければならないケガや、ケガにつながりそうな兆候が出ている時は監督に伝えますが、この状態なら大丈夫、と思う段階では言わず、自分のところで何を伝えるかをコントロールすることはあります。ケガだけではなく日常生活や人間関係での選手の気持ちの変化などはマネージャーとよく話をし、お互いに上手く選手へアプローチできるようにしています。

――ケガから復帰を目指す選手に対して。頑張りすぎてしまう選手もいれば、「本当に大丈夫なのか」と怖さを感じる選手もいると思います。選手への伝え方、アプローチはどのようにされていますか?

まずはリハビリやトレーニングを経て、現状本当に復帰できるかを見極めることが第一で、もう大丈夫だ、と思う選手には具体的にできることを伝えます。スタッフも選手も、全員が「よし、行こう」と納得した状態で練習をさせる、休ませる、という判断ができるのがベストなので、選手が迷っている時は無理にはやらせない。でもそのままにするのではなく「今日は休んで、明日はちょっと頑張ろうか」と少し背中を押すようにしています。


選手には怪我の状態を自身でも意識し、判断できるようになってほしいという

――復帰を焦るあまり、頑張りすぎてしまう選手に対しては?

状況を細かく説明します。「まだこの靭帯が修復していないから今は無理だよね」とか、別の動きをやらせてみて、「この動きで痛みが出るということは、もっと発展した動きをするともっときついよね。だからこの動きができるようになるまで、まずは頑張ろう」と現状を理解してもらいます。できる限り選手に体の状態を自分で把握させたいので、誰かではなく、自分で感じ取ってほしい。たとえば大きなケガだけでなく、慢性的な痛みに対しても「このぐらいなら大丈夫、ここまでは動ける」と判断できるような選手になってほしいと思っています。

――選手にも自立を促す、ということですね。

そうですね。セルフケアも含め、1人1人が自立して選手同士で助け合えるのが理想です。最近は本当にみんなが自立しているので、試合中や練習中に突発的なケガ人が出た時も私が動く前にアイシングに必要な氷を素早く持ってきてくれたり、処置のサポートをしてくれるのですごいな、と感心しています(笑)。女子バレーボールの選手は高校卒業後すぐに実業団に入ることが多いです。なので社会人としても学ぶ環境が必要になります。バレーボールを仕事にしてお金をいただいている以上は自覚を持たせないといけないし、その自覚は持ってほしいと思っています。練習時間も比較的他競技と比べると長いので、休みの日の使い方もリフレッシュするために遊んでもいいけれど次の日の練習があることも考えようね、と。時には「うるさいな」と思われることもあるかもしれませんが、よりよいパフォーマンスを発揮するために、必要だと思うこと、言うべきことは言いますね。


選手がベストパフォーマンスを出すために、伝えるべきことははっきりと伝える

――では最後に、トレーナーという役割が認識され、トレーナーを志望する方も多くいます。「トレーナーになりたい」と志す方々に向けて、アドバイスをお願いします。

選手と同じように、トレーナーも技術は必要ですが、それだけでは成り立ちません。選手のケガを診断できるのは私たちではなくドクターであり、リハビリの過程では理学療法士と連携することもあります。選手はもちろんですが、その親御さんやご家族とコミュニケーションを取ることも多くありますので、技術も大事ですが、信頼関係を築くためにそれ以上にコミュニケーション力は必要です。失敗することもあるし、ケガをした時に対応が間違っていた、と反省することもある。そんな時は誰かに助けてもらわないと務まりません。潤滑な人間関係を育むためのコミュニケーション、人間力をいかに身に着けるか。常に、五感のすべてを張り巡らせておくことが必要なのではないでしょうか。


 

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