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2020/04/04

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レッドロケッツを支える人たち③中西了将コーチ 「多くの“人”に出会った営業職で学んだバランス。異なる経験が、現場で生きる武器になる」

 選手として活躍後、スタッフとして第二の人生を歩み出す。それは決して珍しいことではない。だが、現役引退後にバレーボールとは全く異なる社会の現場に出て、営業職を経てコーチに就任する、しかも営業職としてトップレベルの成績を残してから再びバレーボール現場でコーチに転身するケースは稀だ。
 まさにその“少数派”とも言える道筋をたどり、レッドロケッツのスタッフとして加わった中西了将コーチ。陰の立役者たちを取り上げる連載企画第3回は、現役時代の経験や営業職の経験は、現場でどんなふうに活かされているのか。中西コーチに話を聞いた。


 
名前 中西了将(なかにしりょうすけ)
役職 コーチ(セッターコーチ)
在籍 2017年~NECレッドロケッツ(現職)
主な経歴 2005年~2009年 NECブルーロケッツ(選手)


――ブルーロケッツでの選手生活を経て現役引退後、コーチになった経緯を教えて下さい。

バレーボールを離れてから、金融機関担当の営業職としてさまざまなシステムの提案をしてきました。最初はちんぷんかんぷんで、名刺交換のお作法もわからない、電話の出方もままならない。隣接する部署が海外のお客様とやり取りをすることも多く、たまたまその部署で電話を取ったら、相手は英語。何もしゃべれず「わー」としか言えなかったこともありました(笑)。仕事は正直大変でしたが、周りの方々に助けられ、何とか仕事を覚えることができました。営業での8年間はそれなりの評価もいただきましたので、会社に恩返しできた、と少なからず思っています。何しろ仕事が忙しく、引退後は身体を動かすこともなかったのですが、ブルーロケッツの休部という形で現役生活を終えたので、どこか不完全燃焼な部分もありました。そんな中、山田晃豊・前監督から「セッターを見てほしい」と声をかけていただき、コーチとして再び現場に戻ることになりました。


現役を引退後、営業職を経てコーチへ就任した

――営業職の経験が、バレーボールの現場ではどんな風に活かされていますか?

現役を引退した直後は「社会人として早く一人前にならなきゃ」ともがいていましたが、バレーボールの現場も、営業の現場も、共通部分が非常に多く根底は一緒だと思います。特に営業で突き詰めて考えさせられたことが6つ。コミュニケーション、ヒアリング、観察、プレゼンテーション、スケジュール管理と資料作成能力、そして情報収集と分析力。選手の頃は特に必要性を感じることがありませんでしたが、特にコーチとなった今では、共通することばかりですし、ミーティングで選手へ伝える際もいかに見やすくわかりやすい資料を作成するかなど、細かな部分に至るまで、活かされることが多くあります。

――選手を経てコーチ、ということはありますが、選手から営業職を経てコーチ、というキャリアはバレーボールの現場ではまだまだ少ない。苦労したのはどんなところですか?

バレーボールに関しては私が現役時代の頃とはコンセプトが大きく変わっていることも多く、現場に来て、1から勉強しなおしました。でも、今振り返ると、現役を引退してそのままコーチになっていたら、選手と同じ立場から見るばかりで熱くなりすぎていたかもしれません。もちろん現場に熱は大切ですが、一歩引いて客観的に見ることも必要だと思いますし、いかなる時もある意味冷静にバレーボールの現場でもやってこられているのは営業を経験させてもらったおかげです。それが自分のチーム内での立ち位置だと思いますので、何かしらの力を与えられればいいな、と思っています。営業職として勤めた最後の年には部下に入社1年目の女子社員がいましたが、女子チームを担当するということでそれが今につながる非常にいい経験ともなりました。特に会話よりも“対話”が大事だということを、大変よく学ばせていただきました(笑)。


NECブルーロケッツ所属時代の中西コーチ

――コミュニケーションの重要性、まさに営業職の強みとなる部分ですね?

私のいた部署の上司や先輩方、お客様の中には優秀な方が多かったことにも何より恵まれました。「本当に仕事が出来る人というのはこういう仕事の仕方をされるんだ」と見てわかる環境だったので、あとはそれを真似するだけ。営業という仕事柄、多くの人にも会いましたし、そのたくさんの方々とお話をするだけで学んだことは数えきれないほどにあります。最初の頃は顔と名前を憶えるのに必死で、名刺の裏にその方の特徴などを書き込んでいましたが(笑)、多くの方に会う営業職は、私にとって本当に恵まれた仕事であり職場だったと実感しています。

――コーチとしてのお話を聞かせて下さい。中西コーチがチーム内で担う役割、担当するのはどのようなところでしょうか?

私は主にオフェンス面、セッターを中心にしたコンビネーションの部分を任されています。チーム内のセッターもそれぞれ個性があるので、基本的にはバランスよく。欠点や修正しなければならない部分は重点的に見ますが、それぞれに対してもアプローチの仕方は多少違いますね。目先の状態にとらわれず、先を見据えたアプローチを意識し、長所や性格に合わせてよりよいところを伸ばせるように、誰が試合に出ることになっても常に高いパフォーマンスを発揮できるように、ということを一番に心がけています。


選手に伝える際は「論理性」を大事にするという

――たとえば試合時や練習時、セッターに対しての「伝え方」はどんな違いがあるのでしょうか?

基本的に試合中は限られた時間のため、監督の意向も踏まえて、戦術的なことを論理的にわかり易く伝える論理性を重視し、練習中に関してはコーチングに徹し、感情の部分を大切に扱う情緒性も重視しています。あくまで選手が主役ですので、選手が自分で気づいて、良くない部分は自分で改善できるようなアプローチをしなければいけないと考えていますし、会話を通じて自分なりに納得できる答えを導き出してもらえるような伝え方を心がけています。

――女子と男子の違いはありますか?

一番は空間認識というか、周りを見る視野の広さは違うと感じました。もちろん物理的にネットも身長も男子より低いという前提がありますが、実際私も同じコートに入ってゲーム形式の練習をすると、ここで伝えるだけではわかりづらいかもしれない、と感じることもあります。コートの中で伝えるだけでなく、男子や女子の国際大会、そして日々撮影している練習の映像を見ながら伝えるなど、状況やタイミングに応じてアプローチの仕方がいろいろあると思っています。


相手のブロック枚数を減らす為の仕掛け、女子ならではの特徴を活かしたパターン攻撃などに注目すると、より面白さがある

――技術の面はもちろんですが、セッターは試合の勝敗を握ると言われることも多く、メンタル面のケアも重要であるはずです。同じセッター出身として、心がけることはありますか?

配球のチョイスもそうですが、他の選手への指示も踏まえて試合の流れをコントロールする役割を果たすチームの重要なポジションとなるため、どうしても、悪い状況の中ではセッターへの責任を追及しがちなところもあります。そういう場面で、セッターを直接見る担当のコーチがいればメンタルのケアもしやすいと思いますし、アタッカー陣との懸け橋となりチョイスを迷う時にどれだけ力を貸せるかが、私の仕事でもあると思っています。

――今シーズン(2019/20シーズン)を振り返って、成果と課題はどんなところだったと思いますか?

成果や課題はそれぞれたくさんありますが、結果的に優勝することができなかったので、課題の方が多くあります。ただし、その中でもNECらしい攻撃、次につながるコンビバレーの形はつくれてきたと思います。私の現役時代はサイドへのトスをできるだけ速く、それこそストップウォッチを持って1秒以内に上げるということにこだわっていた時期もありましたが、単純なトスの速さだけでなく、相手のブロック枚数を減らすための攻撃パターンや仕掛けかたはいろいろあります。女子ならではの特徴を活かしたコンビもあり、なおかつ空いているスペースをいかに有効的に使えるかを追求するのも面白さにつながると思うので、これからも、セッター陣と一緒に試行錯誤しながらチャレンジしていきたいと思っています。


「多くの人に出会うこと」で指導者としての枠も広がった

――中西コーチのように、さまざまな経験を経てコーチになることもあり、学生からコーチ、選手からコーチ、と方法を限らず、さまざまな可能性があると思います。これからコーチを志す人たちに向けて、何かアドバイスやメッセージがあればお願いします。

どんな道のりでコーチになるにせよ、それぞれ強みがあると思います。たとえば、ずっと現場にいたコーチからすれば「ここはもっと追い込まなきゃダメだ」という場面でも、私のように選手経験がある立場からすれば「今はこれ以上やるとかなりしんどいですよ」と伝えることもできる。逆に、本当に追い込まなければならない状況の時は、コーチ経験が長ければ長いほどそのバランスもつかんでいるはずなので、ある意味心を鬼にしてではないですが、鍛えるべき時は徹底的に鍛えることもできると思います。どちらが正しい、どちらが違うではなく、それぞれの良さを活かし合ってバランスが取れれば選手のために繋がっていくと感じています。あくまで選手が主役であるということと、選手の心に響かせるためには熱が必要だけれど、冷静さも必要であること。そのバランスを保つためには、バレーボールだけを見るのではなく、いろいろな分野の人たちに会い枠を超えて外の世界とも積極的に交流し、スポーツでもさまざまな競技の人に会って、話を聞けばそれだけたくさんの学びがあります。育成世代のコーチ、トップカテゴリーのコーチもそれぞれ対価やステイタスも違う。いろいろな話を聞く中で模索しながら「自分はこういうスタイル(強み)でやって行こう」と徐々に決めていけるのが一番いいのではないでしょうか。


 

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