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2020/05/02

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レッドロケッツを支える人たち④藤原 稜アナリスト「膨大なデータの中から選手が求める情報を伝える。情報をもとに、戦う能力を高めてほしい」

 コートの外から客観的に試合を見る。しかもただ見るだけではなく、サーブを放ち、レシーブからトス、スパイクに至るまでのわずか数十秒にリアルタイムで膨大なデータを打ち込む。それが「アナリスト」の仕事だ。
 監督、コーチ、選手、すべての架け橋として勝利につながるべく道筋を数字で導き出す。チームにとって欠かせぬ存在であるアナリストだが、おそらく男女を通じてもなかなかいないであろう経歴を歩んでいるのがレッドロケッツの藤原稜アナリスト。陰の立役者たちを取り上げる連載企画第4回は、東大出身、異色のキャリアを誇る藤原アナリストに話を聞いた。


 
名前 藤原 稜(ふじわらりょう)
役職 アナリスト
在籍 2018~NECレッドロケッツ(現職)
前所属 東京大学運動会バレーボール部
 

1試合で打ち込むコード数は約2000

――アナリストのお仕事について。藤原さんの役割、どんなことを行っているのかを教えて下さい。

 映像とデータをもとに自チーム、相手チームの情報を選手、スタッフに伝えるのがアナリストの一番大事な仕事だと思っています。
 具体的に言うと、試合中はプレーと同時並行でパソコンにデータを打ち込む。サーブを打って、レシーブしてという一連の流れの中、サーブを打った選手がどこに打ち、誰がレシーブしてセッターはどの位置でトスアップしたか。さらにその時ミドルの選手はAクイック、Bクイック、どの攻撃に入って、最終的に誰が打ち、相手のブロック枚数は何枚か。
 こうした情報をプレーと同時進行で打ち込んでいます。他競技もアナリストがいて情報分析をしているのですが、バレーボールほど試合のリアルタイムで得られる情報量が多い競技はありませんね。1試合で約2000コードを打ち込むのですが、僕は入力自体が好きなのであまり苦になりません。非常に優れたソフトがあるおかげで僕たちはキーボードだけで完結することができますし、アナリストの地位を築き、データソフトを取り入れて来た黎明期に、苦労して取り組んで下さった諸先輩の方々のおかげだと思います。



――得られた情報は試合期にはどんな風に伝えられるのでしょうか?

 選手に向けて、ミーティングは週に2回行います。まず週の半ばに自チームの体育館で、僕が相手のローテーションごとに分析した結果を伝え、西原コーチがディフェンス、中西コーチがオフェンスについて選手に説明します。
 二度目は試合前日におさらいを兼ね、これまでの練習でどれだけ反映できていたか、さらに明日の試合に向けここをもっと気をつけよう、といったポイントの確認を行っています。

――ミーティングはアナリストの方が主導?

 チームによってはコーチが話したり、監督だけが話したりすることもあると思うのですが、レッドロケッツではアナリストが主導となり、高橋コーチ、中西コーチ、西原コーチがそれぞれの担当分を加える、という形です。
 僕は大学4年生の冬からチームに帯同させていただいたのですが、その当時からすぐにミーティングもさせていただいたので、早い段階から信頼していただけて、とてもありがたかったです。


練習のデータも必ずとる
 

関東三部からVリーグへ。稀有な東大出身アナリスト

――アナリストを最初に志した理由を教えてください。

 大学へ入る時はアナリストになろうと思っていたわけではありませんでした。まだ選手として続けようか、もっと本格的に取り組めばよかったという後悔もあったので迷っていたのですが、一方で新しいことにチャレンジしたい気持ちもある。きっかけは、大学へ入学してバレーボール部の見学に行った際、「ソフトはあるけれどあまり活用できていない」と聞いた時に、アナリストも面白そうだな、と思ったことです。選手として続けるわけではなくとも、新しいことにチャレンジできるし、バレーボールをやりきりたい、という未練も消化できる。自分にはちょうどいいのではないか、と思いアナリストをやってみよう、という結論に至りました。

――最近は大学や高校でも専属のアナリストがいるチームも増え、志す人も多くなりましたが、藤原さんのように東大バレー部からVリーグへ、という方はなかなかいません。

 そうですね。同級生はみんな大学院へ進んで研究を続けていますし、自分でもかなり特殊で変な例だと思います(笑)。
 そもそも東大は関東三部のチームでしたし、アナリストを始めた頃は将来のことなど何も考えず、「Vリーグでアナリストになりたい」と思いもしなかったのですが、たまたま東大のコーチが東海大出身の方で、他チームやアンダーカテゴリーの日本代表でアナリストをしている方を紹介していただいたり、たくさんの方との接点が増えた。ちょうど卒業の時期にレッドロケッツもアナリストを探しているから、と声をかけていただきました。
 就職活動もしていて、いくつか内定もいただいたのですが、その中で一番自分を必要として下さる場所がここだ、と思ったんです。大学時代にお手伝いとして帯同させていただいた時も、どこの馬の骨かわからないような僕の話を、選手も熱心にメモを取りながら聞いてくれて、その時に、スタッフのことも大事にするいいチームだな、と思ったのも入部を決めた一因です。あのまま就職活動をして就職しても輝く道はあったのかもしれませんが、実際に入ってから何をすべきか一番クリアで、必要として下さった場所、それがここだと思ったので、僕はとても恵まれていたと思います。


ミーティングの様子
 

ミーティングは選手が聞きたいことを提供する場

――膨大なデータ量の中から、何を伝えるか。大学とVリーグの違いもあると思いますが、藤原さんはどんなことを特に意識していますか?

 まずはコーチや監督の話と食い違わないようにというのは心がけています。ミーティングの時は時間の制約もありますので、まずシーズンが始まる時に、たとえばブロックについて伝えたいのであれば、この順番で伝える、というひな形をつくります。中身は変わっても、毎回話す大枠は変わらないので選手にも入りやすいかな、と。
 基本的には選手が、情報をもとに戦う能力を高めてほしいと思っているので、1つずつ見れば対戦相手に向けたミーティングをやっているんだけれど、実はそれを1シーズン通して見ると、通年の授業のようにどんどんグレードアップされていた、とつながっていけばいいな、思っています。

――アナリストという立場で、選手に直接アプローチをすることはありますか?

 基本的にはミーティングも練習中も、僕が言いたいことをしゃべる場ではなく、選手が聞きたいことを過不足なく伝える場だと思いますし、練習中も僕はコーチではないので自分から率先して伝えるということはほとんどありません。コーチのほうが選手に近い立場であり、教えるのはコーチや監督なので、そこで僕が何か言うことで選手を混乱するのはよくない。選手から求められた時や、逆にどうしてもこれだけは伝えたほうがいいのではないか、と思うことについては直接伝えるようにしています。

――たとえばどのようなことですか?

 やはり試合で通用するかどうか、というところです。練習中によかったとしても、それは練習だからであって、そのプレーだけをやっていたらVリーグではきついと思うよ、とか。それが僕の範疇から外れていたとしても、映像や実際のデータ収集を通してリーグの試合を一番見ているのは僕だと思いますし、引いた立場で客観的に見ているからこそ見えるものもある。
 ただ、あくまで押し付けるのではなく、選手が「決まったことだけで満足したらよくない」と思えるきっかけになれば、ということは常に意識しています。


 

試合中のやり取りで背中を押す

――試合中には監督やコーチと直接やり取りをしていますが、どんな確認を行っているのでしょうか?

 たとえば西原コーチならば、試合中にブロックのシステムを変えるか、そのまま行くか、という話をします。基本的には事前の策で行くのがベストだと思いますが、展開によっては変えたほうがいいこともある。
 ただ、そこでも僕から主張するのではなく、西原コーチから「どうしようか、変えたほうがいいかな」と聞かれたので「まだ大丈夫です。このままのシステムで行きましょう」と答えました。もしもそこで西原コーチが「もうブロックシステムを変えようと思う」と言われていたら「わかりました。変えましょう」と背中を押そうと思っていましたし、監督から直接聞かれる時も同様です。
 リーグ中は学生のアナリストに手伝ってもらっていたのですが、その子から「NECはこんなにスタッフがデータを反映してくれるチームなんですね。アナリストとして、やりがいがあると感じました」と言ってくれて、僕もありがたいと思いましたし、試合中のイン、アウトのチャレンジ申請をする時も監督やコーチ、選手が「今のイン? アウト?」とアナリスト席にいる僕を見る。他のチームではなかなか見ない光景ですし(笑)、それだけ信頼してもらっているのかな、と思うと嬉しかったです。

――信頼関係を築くうえで、最も重視しているのはどんなことですか?

 スタッフ間も選手に対しても、僕が一方的に「こうしたほうがいい」というのは絶対に違うと思っています。たとえば試合の中でディグが1本上がった、上がらなかった、というのは最終的に選手の責任になるわけです。
 だから選手が後悔のないようにやってほしいし、もしも事前にデータ上は「ここで守ったほうがいい」という場所にいなかったのだとしても、そこで糾弾するのは違う。結果が伴ったのならそれでいいし、伴わなかったら「やっぱりそうだったよね」と確認し、選手も理解してくれればそれでいいと思っています。


試合中、藤原アナリストと意見交換をする中西コーチ

――失敗した、と思うことはありますか?

 どの試合かは覚えていないですが、レッドロケッツのショートサーブが効果的にハマった試合がありました。僕はミーティングで「ショートサーブが効果的だ」と指示を出したわけではないのですが、その試合を見ながら、コーチ陣が「今日はあまりいいスピードでサーブを打てていないから、流れを変えるためにショートサーブを入れてみよう」と判断して、選手が実践した結果、大当たりした。その時に、僕はそこまで考えられていなかった、後悔しましたね。
 言い訳になってしまうかもしれないですが、ショートサーブは相手の裏をかくサーブである一方、相手に対策されればチャンスサーブになりかねないリスクを伴います。場面場面で取り入れることはあっても、全体的なサンプル数が少ないこともあったので、ミーティングの時点ではショートサーブも効果的ではないか、という攻めの姿勢を打ち出せず、シンプルな策で置きに行った自分がまずかった、と反省しました。

――今後チャレンジしてみたいことはありますか?

 かなり膨大な量のデータを打ち込む、と言いましたが、まだ数字で表すことのできないものもたくさんあります。
 たとえばコート内で動くリベロ、動かないリベロがいたとして、どれだけレシーブが上がっているかなど、その差を数字で出せればそれも面白いと思うのですが、移動距離は出すことができても、リアルタイムで撮れる数字には表れない。スパイクの打点や最高到達点も同様です。これが数字で表せるようになり、もっと一般に普及できるようになったら、たとえば最高到達点300㎝未満が何回続いたか、とか、280㎝未満が何回続いたから交代したほうがいい、という1つの基準にもなります。
 実際にラグビーやサッカーではスプリント回数が落ちてきたから交代、と1つの判断基準にされていますし、それならば交代を命じられた選手も納得できる。アナリストもそういう領域に踏み込んでも面白いのではないか、と個人的には思います。
 でも、チームスポーツの中には、どれほど数字が下がっても絶対にこの選手はコートにいなければいけない、という存在もいる。だから相手はその選手を崩すためにサーブで狙ったり、ブロックを厚くする。そこまで広がって見てもらうことができれば、バレーボールの面白さも伝わると思いますし、僕もまだ気づいていない面白さを、経験を重ねることでどんどん広げていきたいです。

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