~第62回 黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会リポート~

  info_category1.gif2013/05/07


 
 今季の最終戦となった黒鷲旗。戦いに臨むレッドロケッツの選手たちが、試合前に抱いていた決意がある。
リーグで4位に終わった悔しさを、今度こそ晴らしたい。そして、長きに亘りチームを支え、引っ張ってきてくれたスギさんを、勝って、笑顔で送り出したい。山田監督は選手たちにこう言った。
「スギが安心して引退できるように、これからのNECは大丈夫だ、と思わせる試合をしよう」


 
 JTとの準決勝。相手チームも、長きに亘りチームの中心として活躍してきた選手たちが今大会限りでの引退を表明していた。「勝って送り出したい」という思いは同じ。キャプテンの内田はこう言った。
「スギさんも含めて、これまで長い間日本のバレー界を引っ張ってきてくれた方々の最後の試合にふさわしくなるように、自分たちがやってきたことを思い切り発揮して、最高のプレー、最高の試合をすることを心がけて臨みました」
 まずはサーブで攻め、主導権を握る。ブロックで着実にワンタッチを取り、近江、イエリズの攻撃で得点を重ねる。まさに狙い通りの、そしてレギュラーラウンドを1位通過した底力を存分に発揮し、リードを保ったまま試合が進む。JTの粘りに追い上げを許す場面もあったが、途中交代で出てきた選手たちも各々の役割を果たし、最後は近江のブロックポイントで3-0。ストレート勝ちで2年ぶりの決勝へとコマを進めた。
 決勝の相手は久光製薬。レギュラーラウンドでは4戦4勝しながら、セミファイナルで敗れた相手であり、この大会を制すればリーグ、天皇杯皇后杯全日本選手権に続いて三冠を達成する。決勝を戦うのに、これ以上ふさわしい相手はいない。
決戦を前に、近江が力強く言った。
「私たちはチャレンジャー。どの相手に対しても全力で、勝ちに行くだけです」


 
 そして、迎えた決勝。
 まずは試合の序盤でどれだけリードできるかが1つの狙いだったのだが、リーグを制した勢いをそのままに、久光製薬の手堅いブロック&レシーブから攻撃につなげられ、先行されてしまう。
 3-7と4点のビハインドを背負った苦しい場面で、チームに流れをもたらしたのがこの試合がラストゲームとなる杉山だった。
 彼女の代名詞とも言える鮮やかな速攻を立て続けに決め、3連続得点で6-7と1点差まで追い上げる。「1本1本、1試合1試合を大切に、楽しみながら戦いたい」と言う杉山が、最後の試合でも抜群の存在感を発揮し、チームに戦う意志を見せつけた。
 しかし、劣勢になっても崩れないのが2つのタイトルを制した久光製薬の強さでもある。的確に狙いを絞ったサーブから連続失点を喫し、1、2セットを久光製薬に連取されてしまう。



 何としても勝ちたい。その思いをぶつけるがごとく、第3セットもレッドロケッツは懸命の粘りを見せる。リベロの鳥越を中心に、まさにボールに食らいつくようなレシーブでチャンスをつなげ、白垣、島村、近江といったこれからのチームを牽引する若い力が、逆転に向けて躍動する。勝負所でのミスもあったが、杉山が「本当にこの一年で成長した」と言うように、高い目標を掲げて挑んできたシーズン集大成にふさわしい姿を見せた。
 17-24と大きくリードをされながらも、白垣のスパイク、ブロックで連続得点し20-24まで追い上げる。しかし、反撃もここまで――。長岡のスパイクが決まり、20-25。セットカウント0-3で敗れ、レッドロケッツは準優勝に終わった。


 
 戦いを終えると、選手たちは涙で杉山の元へと集まった。それぞれの、涙の理由を内田が代弁した。
「優勝して、スギさんを送り出したかった。それができなくて、本当に残念です」
 苦しい時には、いつも助けてくれた。見えない気配りが、若い選手にとっては何よりも心強かった。時には厳しい言葉で叱咤することもあったが、それもすべてチームのため。数えきれないほどたくさんの感謝があったから、勝つことで恩返しがしたかった。「ごめんなさい」と涙する後輩たちを、杉山が、優しく抱きしめる。
「悔いがあるとしたら、優勝する喜びを教えてあげられなかったこと。優勝の経験をさせてあげて、こんなに嬉しいものなんだと味わわせてあげられなかったことが心残りです」
 優勝を喜ぶ久光製薬の隣で、15年間に亘りレッドロケッツの象徴であり続けた杉山を、たくさんの「ありがとう」の思いを込めて胴上げをした。
「周りの仲間、スタッフ、たくさんの人に恵まれた。大きなケガもなく、思い切りバレーボールができた。いい15年間でした」
 最後は笑顔で。15年間の現役生活の幕を閉じた。
杉山がチームに残してくれたものを、これからのチームに生かしていくために。山田監督が、選手たちに言った。
「この悔しさを持って、次に向かっていこう」
 終わりは、始まりでもある。この経験を強さに変えて行けるように。新たな戦いへ向けて、レッドロケッツの進化は続く。


 
 
 ■第62回黒鷲旗 個人賞受賞者
  ・敢闘賞  杉山祥子(初)
  ・ベスト6 杉山祥子(2年ぶり3回目)
 




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