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レッドロケッツ応援記 ~4/4 対久光製薬スプリングス戦  『心』一つに最強王者を下し、10シーズンぶりとなる悲願の日本一!~

  info_category1.gif2015/04/06

 

 近江の渾身のスパイクが相手ブロックをかいくぐり、ボールは、まるでスローモーションのようにネット際にポトリと落ちた。勝利が決まった瞬間、コートの選手たちは輪になって喜びを爆発させ、アップゾーンにいた選手たちも走り込んで、その輪に加わった。感涙にむせぶ者、満面の笑みを浮かべる者、雄叫びを上げる者…。選手、チームスタッフが誰彼なく抱擁し合い、胸にこみ上げてくる熱い感情をすべて解き放つ。東京体育館のスタンドをびっしりと埋め尽くし、真っ赤に染めたサポーターも、この時が来るのを待っていた。強く、信じていた。レッドロケッツが2004/05年以来、10シーズンぶりにV・プレミアリーグを制したのだ。
 幾多もの困難を乗り越え、ようやくたどり着いたファイナルの舞台だった。相手はリーグ3連覇を目指す女王・久光製薬スプリングス。主要3大会において、昨季は5戦全敗を喫し、今季も1勝4敗と大きく負け越すなど、常にレッドロケッツの前に高い壁となって立ちはだかってきた。最高の舞台で戦う相手として、これ以上のチームはない。試合前日の会見で、キャプテンの秋山はきっぱりと言っていた。
「NECが決勝に進出するのは10年ぶりということで、選手では誰も経験したことのない試合になります。失うものは何もありません。チャレンジャーの気持ちを持って、今までやってきたことを明日の一戦にすべてぶつけ、最後はみんなで笑って終わりたい」



 立ち上がり、レッドロケッツは島村、白垣、柳田がしっかりと得点を決めていく。6-7から8-12と一旦は抜け出されたものの、島村の速攻やバックアタック、山口のツーアタックで追い上げると、リズムを変えるべく送り込まれた秋山と鳥越の活躍で、15-15の同点に。そこからは互いに譲らず、近江や白垣の攻撃を軸に緊迫した点の取り合いが続いた。終盤に一瞬の隙を突かれ、22-25で最初のセットを落としたが、選手たちはそこでまったく慌てなかった。
 第2セット開始とともに切り込み役を担ったのは、ファイナルラウンドに入って存在感がひと際光る柳田だ。「一本一本に、いろいろな人の思いを感じ、感謝しながらプレーした」と、2本のバックアタックとブロックでチームをリズムに乗せ、全員で懸命についないだラリーは近江のポイントで制した。7-7から島村、途中から投入された古賀、柳田による3連続得点。1点差に迫られても、リベロ岩崎の2本のスーパーレシーブから柳田が冷静に落とし、上野はチャンスボールをダイレクトで押し込むなど、同点にはさせなかった。中盤以降、柳田のサービスエースや島村のブロード攻撃で5点差とし、古賀のスパイクや秋山のツーアタックで、追いすがる相手を振り切る。セットポイントでは近江がブロックで仕留め、25-22でセットを奪い返した。



 セットカウントは1-1、しかし、より勢いがあったのはレッドロケッツだったのではないか。柳田と第3セットのスタートから入った古賀の若い2人による伸び伸びしたプレーが、それを何よりも象徴していた。山田監督は「白垣を古賀に代えた時点では、吉と出るかどうなるかわからなかった」と話したが、3日前に社会人になったばかりの古賀は、プレッシャーのかかる大舞台をむしろ楽しんでいるようにさえ見えた。島村の先制点の後、柳田と古賀の活躍で、8-3と主導権を握る。女王の意地を見せてきた久光製薬の前に中盤、12-13と逆転を許したが、古賀の連続得点ですぐに再逆転。15-15から大野のスパイクとブロック、近江のフェイントなどで一気に5連続得点を挙げ、25-19でこのセットもレッドロケッツがものにした。
 ただ、若い柳田や古賀が躍動できたのは、これまで主力を担ってきた近江や島村、山口や岩崎らの存在があったからにほかならない。柳田が言う。
「アタックを決めるために自分で考えながらやっていた部分もありますが、フォローに入ってくれる周りの5人やコートの外の人たちが、打つ瞬間に(相手コートの)空いている所をコールしてくれるので、(そこを狙って)決めることができました」
 さらに、この日、久光製薬のポイントゲッターの1人でもある石井のアタック決定率を17.8%に抑えることに成功したレッドロケッツだが、山田監督はその立役者として、岩崎の名前を挙げている。
「基本的には事前にコーチ陣がデータを分析し、このアタッカーにはこのフォーメーションで守ろうと決めていますが、試合を進めていく中で、岩崎が感覚で感じたことをチームに伝え、(ブロックとの連携を含めて)状況によって対応できる形をとっています」
 第4セットに入ると、そうした成果もあり、相手エースの長岡にこそ多くのスパイクを決められたが、新鍋には2本のみ、石井には1本のスパイクも決めさせなかった。レッドロケッツは、秋山が「今季は全員が常に攻撃に参加するということでやってきた。それが1人に頼らず、みんなで攻撃する形につながった」と振り返ったように、セッターの山口がアタッカー陣をうまく使い分け、相手に的を絞らせない。
 1回目のテクニカルタイムアウトまでは一進一退が続いたが、古賀や大野の得点で14-10。白垣の好レシーブから島村が力強いブロード攻撃を決めて17-13とした直後から4連続失点を喫したものの、センター陣の踏ん張りで勝ち越しは許さなかった。20-20から大野のブロックと柳田のスパイクで一歩抜け出し、近江と柳田の得点でチャンピオンシップポイント。そして、近江がスパイクを決めた冒頭のシーンへとつながっていった。


 
 選手たちの手で三度、胴上げをされた山田監督は優勝の喜びを次のように語った。
「挑戦者として向かっていこうという、ずっと意識してきたことを出せました。戦術的にはサーブで崩し、ブロックでできるだけ相手に良いオフェンスをさせないという狙いが、試合が進むにつれて固まっていきました。スタートの選手はもちろん、途中から出る選手や若い選手が起爆剤になってくれた結果、このように優勝することができ、選手に本当に感謝しています」
 コートの中にいようと外にいようと、常にチームの精神的支柱であり続けた秋山は「チームワークの勝利」と胸を張った。
「若いチームなので勢いで戦おうと挑んだ今リーグでしたが、次第に勢いだけでは勝てなくなり、負けた時にみんなで考えながら強くなってきたチームです。チーム力ならどこにも負けない自信がありました。最後は一人ひとりの力を一つにして戦うということだけで、今日の決勝戦でそれを出し切れたと思います」
 レギュラーラウンドの個人技術集計をもとに表彰される6部門の個人賞は、レッドロケッツからは1人も該当者が出なかった。それは逆に、1人の選手に頼ることがなかったことの証である。
 表彰式では、選手全員の首に金メダルかかけられ、八幡、イエリズ、山口が優勝プレートや賞金ボードを受け取った後、キャプテンの秋山に栄誉あるブランデージ・トロフィーが手渡された。秋山がそのトロフィーを高々と掲げると、後ろの並んだ選手たちもつないだ両手を高くかざした。私たちはこの素晴らしい光景を、きっと永遠に忘れることはないだろう。
 2015年4月4日――、レッドロケッツは長く長く閉ざされていた日本一という扉を、強固な結束力でついにこじ開けた。






 
 ~攻守両面でリーダーシップを発揮し、最高殊勲選手賞に輝く~

 最高殊勲選手賞、今リーグのMVPに選出されたのは、副キャプテンとしてチームを牽引してきた近江だった。レギュラーラウンドにおけるアタック決定率や総得点など、攻撃に関するデータではほとんどが白垣、島村、イエリズに続くチーム4番手。それでも、近江のMVP受賞に誰も異存はないだろう。ファイナル3で勝利した後、近江はファイナルへ向けてこう語っていた。
「私たちに大エースはいませんが、粘り強さを武器にしているので、泥臭く1点1点を積み重ねて勝利をものにしたい。私自身はディフェンス面で軸にならないといけないと思っています。リベロと中心となって、ディフェンスから攻撃につなげる目立たないプレーを丁寧にやってチームに貢献したいです」
 その言葉通り、この日の久光製薬戦も、成功率75.0%をマークした安定感のサーブレシーブと身体を張ったレシーブで、岩崎とともに堅い守備網を築き、アタッカー陣の得点につなげていった。
 ただ、近江は守備だけに力を注いでいたわけではない。攻撃面に関しても、「昨季の反省として、サイドの決定力不足をスタッフから言われていて、センターに頼らず、サイドも打ち切るということを鍛錬期に練習してきた」という。それでも「どこかでイエリズに頼ってしまう部分があった」が、そのイエリズがファイナルラウンドに入る前に故障で離脱。「それがきっかけとなって、もう一度、一人ひとりがオフェンスの面で自分が中心になるという気持ちをさらに強めた」と話す。
 アタックではこの日、柳田に次ぐ15点をマーク。とりわけ相手を手玉に取るようなブロックアウトや、絶妙なスペースに落とすフェイントでの得点は、相手に1点以上の精神的ダメージを与えたに違いない。
 2シーズンぶりにベスト6にも選出され、その感想を「みんなのおかげで獲れた賞なので本当にうれしく思います」と語った近江。長いシーズンを終え、心も身体も大きな疲労があるはずだが、「NECは若い選手が多い。これからNECの時代を作っていきたいです」と、すでに視線を次へと向けていた。
(取材・文:小野哲史)

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